
能楽対談 第654回
大島輝久(シテ方喜多流)
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川口晃平(シテ方観世流)
太平洋戦争の記憶を語り継ぐ 新作能「巣鴨塚ハルの便り」の試み
▼2025年8月15日、戦後八十年の終戦記念日にあたる日に<敗戦八十周年記念公演 杉本修羅能「巣鴨塚 ハルの便り」>が上演される。A級戦犯として巣鴨拘置所で処刑された陸軍大将・板垣征四郎を主人公(シテ)としたこの新作能。シテ役を勤める大島輝久氏と、能本を手掛け地謡も勤める川口晃平氏に、今作を作るに至った経緯、史実を能の形式に落とし込んでいく際の創意工夫、太平洋戦争の記憶を能で語り継ぐことの思いについて語っていただいた。

[見出し]
・戦後八十年 新作能「巣鴨塚」
・板垣征四郎 満州国の闇と光
・新作能を書く 工夫と演出
・十寸髪男(ますがみおとこ)との出会い
・戦争と能 現代の語り部に
新作を書くというのは自分の思いを前面に出すのではなく、演者の技や工夫をどう生かすか、そのからくりをつくる作業なのだということです(川口晃平氏、本記事より)
ああ、自分にもいよいよ<語り部>としての役割が回ってきたんだな」と、そんな感覚がありました。(中略)こうして語ることによって、「あの出来事はなんだったのか」と立ち止まって考える機会になるかもしれない(大島輝久氏、本記事より)
能は、本来の芸能が担っていた「鎮魂」「祝福」「祈り」という三つの機能を持っていると思っています。今回の「巣鴨塚」も、まさにそういった役割を担えるものであったら、さらには戦争に関わったあらゆる人たちの魂に、ほんのわずかでも安らぎをもたらすような舞台になってくれたら(川口晃平氏、本記事より)


【そのほかの読み物】
〈批評と感想〉
珠玉のひととき〜令和7年6月の舞台から〜
高桑 いづみ
▼2025年6月1日『狂言ざゞん公演』から「清水座頭」深田博治、中村修一、「武悪」月崎晴夫、高野和憲、「柑子」砕石普照、「雛売」野村万作、4日『国立能楽堂定例公演』から復曲能「玉井」宝生和英、7日『セルリアンタワー能楽堂定期能(第一部)』から「頼政」武田孝史★、宝生常三、8日『月イチ能楽講座スペシャル』から「井筒」大槻裕一★、11日『東京能楽囃子科協議会・夜能』から「茶子味梅」野村萬斎・裕基、「第六天」観世喜正、宝生常三、15日『京都観世会 復曲試演の会』から復曲能「宮城野」片山伸吾★、竹市学、18日『日経能楽鑑賞会』から「文蔵」野村万作★、「杜若・素囃子」片山九郎右衛門★、19日『国立定例公演』から「六浦」大槻文藏★、21日『き乃會』から「名取川」山本則重★、「小原御幸」狩野了一★を紹介。(★は写真掲載)
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【連載】西三河在住能楽研修者の眼差し:令和七年初夏の舞台さまざま―愛知県を中心に―
飯塚 恵理人
▼2025年5月5日『第二十七会明之會』から「卒都婆小町」加藤眞悟、5月17日『名古屋能楽堂五月定例公演』から「咲曄」鹿島俊裕、佐藤友彦、今枝郁雄、「三輪」吉沢旭、飯冨雅介、6月15日『蛍火能』から「玉井」宝生和英、「生田敦盛」内藤飛龍★、6月21日『能の旅人 第十九回公演』から「碇潜・船出之習」観世喜正★、6月29日『奈良金春会演能会』から「奈良詣」金春飛翔、「鵜飼」金春憲和、7月5日『名古屋能楽堂七月定例公演』から「鎌腹」奥津健太郎、伊藤泰、「羽衣・替之型」本田布由樹★を紹介。(★は写真掲載)
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白石城開門三十周年特別公演 碧水園で「橋辨慶」笛之巻
樽川 央樹(能楽愛好家)
▼2025年6月7日、宮城県白石市の古典芸能伝承の館(碧水園)の屋内能楽堂で開催された『白石能』のもようを能楽愛好家の樽川央樹が振り返る。「橋辨慶・笛之巻」小島英明★、子方・小島史織★、アイ・野村裕基を紹介。(★は写真掲載)
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〈ニュース、レポートなど〉
■国の選定保存技術および保持者に木村泰史氏★
■亀井忠雄三回忌追善 広忠の会
■野村万作の芸歴90年を描くドキュメンタリー映画『六つの顔』 犬童一心監督が演出 今月公開へ
■三島由紀夫生誕100年記念 武蔵野大学で特別講座開催へ
■三響會NYで特別公演 カーネギーホールにて観世喜正氏らが参加
■戦後八〇年の節目 戦争題材の新作能 喜多能楽堂で相次ぎ上演
■渋沢栄一翁 顕彰能「青淵」 9月に観世能楽堂で初演 シテ栄一は観世三郎太氏★
■落合陽一が仕掛ける音楽会 能楽とオーケストラが交差 野村万蔵氏、馬野正基氏らが参加★
■殿田謙吉氏 お別れの会★
(★は写真掲載)
◆2025年8月の全国の能楽公演カレンダー「今月の能」収録◆
〈暑中広告の掲載〉
能楽タイムズでは、毎年1月に年賀広告、8月に暑中広告を掲載しております。
今年の8月号でも、能楽師、会派や流派、能楽堂、小道具や衣装の企業、能・狂言写真家など、流儀や家、職分を越えて様々な方からお申し込みいただき、暑中見舞いとして名前を列記させていただきました。誠にありがとうございました。


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