シテ方観世流・山本章弘氏が代表理事を務める山本能楽堂(大阪市中央区)が、ルーマニアの舞台芸術の祭典「シビウ国際演劇祭」において2026年度の「ウォーク・オブ・フェイム」を受賞した。同祭における上演者の中でも舞台芸術へ卓越した貢献を果たしたアーティスト、俳優などに贈られる賞で、2013年の創設以来、日本からの受賞は6例目、「劇場」としての受賞は初となる。

シビウ国際演劇祭は1993年より毎年6月にルーマニアの古都シビウで開催され、10日間にわたって85以上の会場で850以上の公演・関連イベントを行っている。1日あたりの観客は約10万人を超え、今ではイギリスのエジンバラ、フランスのアビニョンと並んでヨーロッパ3大演劇祭の一つとしても数えられている。
山本能楽堂は2016年に初めて招聘を受け、「安達原」を上演。以来毎年招聘を受け、これまでに能の公演を23回、ワークショップを2回実施してきた。コロナ禍明けとなる2022年は、教会で「翁」と「藤戸」、大広場でストリートライブ能を上演したほか、市役所ホールで10日間の能面展示を行った。2023年には新作能「ファウスト」を現地の女優、声楽家とコラボ上演している。




「ウォーク・オブ・フェイム」は演劇、文学、そして広く文化的想像力に深い影響を与えてきた芸術家を称えるものとして同演劇祭が創設したもので、以来13年間で77名の舞台芸術関係者や俳優が受賞。日本からは十八代目中村勘三郎氏、串田和美氏、野田秀樹氏、笈田ヨシ氏、佐々木蔵之介氏らが受賞している。
2026年度は、ノーベル文学賞を受賞したオーストラリアの劇作家エルフリーデ・イェリネク氏など7人に加え、山本能楽堂の計8組が受賞した。6月27日に受賞者の名前を刻んだ記念プレートがシビウのシタデル公園の遊歩道に埋め込まれ、授与式が執り行われる。


山本能楽堂は、1927年にシテ方観世流の山本博之氏(1913~1973)が「観鵆會舞台」の名で現在の大阪市東区に創設。1945年の大阪大空襲で焼失後、1950年に現在の施設が再建された。3階建の木造建築で、市街地にありながら伝統的な能舞台を持つ能楽堂として2006年に「国登録有形文化財」登録。現在は博之氏の孫にあたる章弘氏が代表理事として運営し、伝統的な定期能「たにまち能」に加え、初心者やインバウンド客向けの能公演「とくい能」、「初心者のための上方伝統芸能ナイト」などを開催している。
シビウ国際演劇祭における山本能楽堂の公演の模様は、弊紙『能楽タイムズ』2017年9月号掲載の記事「シビウ国際演劇祭のThe Feather Mantle & The Red-Faced Imp(「羽衣」と「猩々」)を見て」(執筆:みなもとごろう)と、2018年12月号掲載の記事「場所の記憶、招ばれし能ー能「敦盛」 於ルーマニア・チスナディオラ砦要塞教会ー」(執筆:豊島瑞穂)でもお伝えしている。



