文化庁芸術祭賞優秀賞

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文化庁芸術祭賞優秀賞に
(公財)武田太加志記念能楽振興財団
狂言方大蔵流 善竹隆司氏

 文化庁は平成29年12月27日、優れた芸術活動を表彰する『文化庁芸術祭賞』の平成29年度(第72回)受賞者を発表し、能楽界から演劇部門優秀賞に、公益財団法人・武田太加志記念能楽振興財団(関東参加公演の部)と狂言方大蔵流の善竹隆司氏(関西参加公演の部)が選ばれた。受賞対象および授賞理由は、それぞれ左記の通り。

 (公財)武田太加志記念能楽振興財団:受賞対象=「関寺小町」(シテ武田志房)の成果/理由=能の中でも最奥の秘曲「関寺小町」はあらゆる条件が調わないと上演は成功せず、出演者総員の責任はきわめて重い。今回のシテ・武田志房は初役だが、すべてにわたり丁寧な目配りを巡らせた後見・観世清和、地頭・梅若玄祥、大鼓・亀井忠雄や笛・藤田六郎兵衛、経験を積んだ優秀な人材が随所で相補うことにより大曲の趣意がおのずから明らかになった。「関寺小町」上演史に新たな一ページを加えた意義は大きい。

 善竹隆司氏:受賞対象=第23回照の会「土蜘蛛・替間」における成果/理由=化け物退治の能としての印象が強い「土蜘蛛」の間狂言を、大和朝廷成立以前の先住民が討伐された史実に目を向けるものとしたことで、歴史に葬られた敗者の立場を明確にした。面・装束や語りの補足等に留意して再演を重ねることで、さらに良くなると期待される。実験的な試みを敢行した「照の会」主宰・上田拓司の勇気も買いたい。


[略 歴]

▼(公財)武田太加志記念能楽振興財団:平成28年11月1日、武田志房氏とその長男友志氏により設立。志房氏の父・武田太加志氏の遺志を受け継ぐとともに、故人が生前蒐集した能面、能装束の保存・修復、また、昭和51年に再建された「武田修能館」の維持継承などを前提に、これらを公財として能楽界の振興のため活用することを目的とする。理事長は武田友志氏。顧問は二十六世観世宗家観世清和氏が務める。

▼善竹隆司氏:狂言方大蔵流。昭和48年生。善竹忠一郎の長男。父に師事。「靱猿」で初舞台(5歳)。以降、「三番三」「那須語」「釣狐」「花子」を披く。平成15年「兵庫県芸術奨励賞」、「大阪文化祭奨励賞」、23年「大阪文化祭賞」、24年度「咲くやこの花賞」など受賞多数。『善竹兄弟狂言会』を弟・隆平とともに主宰。兵庫県立宝塚北高等学校演劇科講師、大阪芸術大学舞台芸術学科講師。重要無形文化財保持者(総合認定)。